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  • 執筆者の写真田中亜弥

水とは

更新日:2020年5月3日

 今回は、私たちの体にとって大切な「水」についてお話ししていきます。


1.体内における水分含有率

 水は、私たちの体にもっとも多く含まれる物質で、人の体を作る成分のうち、約50〜60%を占めています。その中でも、脳、腸、腎臓、筋肉、肝臓などの臓器・組織中の水分含有量は80%と比較的多い一方、脂肪組織(皮下組織)は中性脂肪が多いので、水分含有率は約33%と低いです。

 また、女性は、男性に比べると脂肪量が多いため、水分含有率は約55%と少ないです。

 さらに、高齢者は加齢とともに細胞数が減るため、水分含有量が減り、約50%になります。


2.水の働き

(1)栄養素、酸素や老廃物を運ぶ

 水は溶解力に優れ、酸素や二酸化炭素など多くの物質を溶かし込むことができます。そのため、水はその溶解力を活かして消化吸収に関与し、体内に取り入れた栄養素や酸素を溶かして、組織に運ぶ働きをします。

 また、水は各細胞で生じた代謝産物を溶かし、循環系を経て腎臓に運び、尿中に排泄させます。汗にも様々な物質が含まれており、排泄する役割を担っています。

(2)体温を調節する

 水は、体に大量の水を含ませることで、外気温の影響を受けにくくし、体温を保持する働きをしています。

 また、水は蒸発するときの気化熱が大きいことから、発汗などによって体温の調節をしています。 

(3)体液の浸透圧を維持する

 水は、細胞膜を自由に通過できるため、細胞内外のイオン濃度を一定に保ち、浸透圧を維持しています。この水の働きによって、生命の維持に必要な代謝がスムーズに行われています。


3.水の摂取量と排泄量

 栄養素は、厚生労働省が定めている「食事摂取基準」によって摂取量が決められていますが、水に関しては明確に基準値は設定されていません。

 水には、飲料水や食物中の水分などの外から摂取する水と、体内で栄養素がエネルギーになるときに生成される代謝水とがあります。これらの水の総量は、1日約2,500mlと言われています。その内訳は、飲料水から約1,300ml、食物中の水分から約1,000ml、代謝水は約200mlです。

 一方で、摂取した水分は、尿、便、皮膚や呼吸から1日約2,500ml排泄されています。尿量は約1,500ml、便は約100ml、呼気や皮膚からは約900ml排泄されます。

 健康な状態では、摂取される水分と排泄される水分はバランスが取れています。しかし、運動をしたり、汗を大量にかくときは、水分が大量に失われるので、その分の水分補給が必要になります。水分補給は、一気にたくさん飲むのではなく、1回コップ1杯程度(150~250ミリリットル)の量の水をこまめに飲み、1日の必要量(最低でも約1.5リットル)を補給するといいと言われています。起床後、通勤時、スポーツや入浴時、就寝前などにこまめに水を飲めば、水分不足に陥ることなく、また水のとりすぎで体に負担をかけることもなく、疲労回復や健康維持に役立てることができると考えられています。


4.水の欠乏と過剰摂取による弊害

(1)水の欠乏

  人がのどの渇きを感じた時は、すでに脱水が始まっており、体から1%の水分が失われている状態です。損失した水分が補われないと体重に占める水分の割合は低下し、脱水が起こります。体重あたり4〜6%の脱水で、血しょう量、唾液量、尿量は減少し、体温が上昇し、全身の倦怠感や頭痛、嘔吐、めまい、痰を出しにくい、血圧低下、臓器の血流低下などがみられます。さらに、10%を超えると、高度の脱水で心臓・腎臓・呼吸機能不全がみられ、死に至ることもあります。

(2)水の過剰摂取

 体が必要な量よりはるかに多い水分を摂取すると、水分過剰になることがあります。しかし、多量の水を飲んでも、下垂体、腎臓、肝臓、心臓が正常に機能していれば、水分過剰にはなりません。例えば、腎機能が正常な若い成人の場合、体の水分排出能力を上回るには、1日当たり約23リットル以上の水を毎日飲まなければなりません。だから多くの場合、症状は現れませんが、重度の水分過剰では、錯乱やけいれん発作(水中毒)が起こることもあります。


 このように体における「水」の必要性をお伝えしてきましたが、ご自身で日々の水分量が足りてないと感じる方は、ぜひ今まで以上に意識してこまめに摂取することをオススメします。

 次回は、「ダイエットとカロリー」に関するお話をしていきます。お楽しみに!


〔参考文献〕

・『改訂新版いちばん詳しくて、わかりやすい!栄養の教科書』中島洋子監修(新星出版社)

※なお、このブログは、タイトルに関する基本情報を出来るだけ端的に分かりやすく伝えるために、文献から多く引用している箇所もありますが、著作権を侵害する意図はありません。私自身の知識をまとめる作業の一環でもあり、至らない所もあると思いますので、より詳しく知りたい方は上記の文献をぜひご覧ください。

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