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  • 執筆者の写真田中亜弥

脂質とは

更新日:2020年5月3日

 今日は、「脂質」について書いていきます。

 一般的にマイナスイメージの強い「脂質」ですが、三大栄養素である「脂質」はとても重要な役割を持っています。


1.脂質とは

 三大栄養素である「脂質」とは、水に溶けず、エーテルやクロロホルムなどの有機溶媒に溶ける物質の総称で、炭素、水素、酸素で構成されています。

 脂質は、1gあたり9kcalもあり、1gあたり4kcalである炭水化物やたんぱく質と比べて、三大栄養素の中で最も高いエネルギーを得ることができます。


2.脂質の働き

(1)エネルギー源としての働き

 脂質は、炭水化物やたんぱく質の約2倍の、1グラムあたり9キロカロリーのエネルギーを産生しており、重要なエネルギー源となっています。

また、脂質は貯蔵効率の高いエネルギー源でもあり、使われなかった分は、皮下や腹腔内に蓄えられます。これにより、皮下脂肪として、臓器を保護したり、体を寒冷から守る働きもあります。

(2)生体膜の構成成分となる

 リン脂質、糖脂質、コレステロールは生体膜(細胞膜など、生物の基本単位である細胞を構成している膜構造の総称)の成分となり、細胞の働きを維持する役割をしています。

(3)脂溶性ビタミンの補給を助ける

 脂質は、体内で作ることのできないリノール酸やαリノレン酸など、必須脂肪酸を摂取するために重要です。

 また、ビタミンA、D、E、Kの脂溶性ビタミンは、脂質(油脂)に溶け込んでいることが多いので、脂溶性ビタミンの供給源としても役に立っています。


3.脂質を多く含む食材

 食用の脂質には、ごま油、大豆油、コーン油、オリーブオイルのように常温で液体のものと、ラードやバターのように固体のものがあります。

 また、魚や肉などの動物性食品、穀物、豆類、乳製品、卵などにも脂質は含まれています。


4.脂質の必要摂取量

 厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、脂質の食事摂取基準は総エネルギー摂取量の20~30%となっています。

 また、コレステロールは体内でも合成されるため、脂質異常症の重症化予防の目的から、200mg/日未満に抑えるのが望ましいとされています。


5.脂質の過剰摂取と欠乏による弊害

(1)過剰摂取の場合

脂質を摂りすぎると、体脂肪として蓄えられて、肥満を招き、脂質異常症(=高脂血症)、動脈硬化、心臓病など、さまざまな生活習慣病の原因になります。

(2)欠乏の場合

 逆に、脂質の摂取量が不足すると、エネルギーが不足して疲れやすくなったり、体の抵抗力が低下する可能性があります。

 また、脂質とともに吸収される脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)が吸収されにくくなり、ビタミン欠乏になるリスクもあります。

さらに、必須脂肪酸である、n‒6系脂肪酸と n‒3系脂肪酸は体内で合成できないので、欠乏すると皮膚炎などが発症する可能性があります。


 このように、脂質は非常に重要な役割を果たしているので、脂質の摂取量を上手にコントロールすることが、生活習慣病を予防する上でも、ダイエットにおいても重要です。


 次回は、五大栄養素の一つ、「ビタミン」についてです。お楽しみに!



〔参考文献〕

・『改訂新版いちばん詳しくて、わかりやすい!栄養の教科書』中島洋子監修(新星出版社)

・「日本人の食事摂取基準(2020年版)各論『脂質』」(厚生労働省)

※なお、このブログは、タイトルに関する基本情報を出来るだけ端的に分かりやすく伝えるために、文献から多く引用している箇所もありますが、著作権を侵害する意図はありません。私自身の知識をまとめる作業の一環でもあり、至らない所もあると思いますので、より詳しく知りたい方は上記の文献をぜひご覧ください。

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