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  • 執筆者の写真田中亜弥

カフェインとは

 今回は、アスリートだけでなく、一般的にも大変馴染みのあるカフェインについてお話ししていきます。


1.カフェインとは

 カフェインは、コーヒー豆、茶葉、カカオ豆、エナジードリンクなどに多く含まれる成分です。アルカロイドという化合物の一種で、毒性を持ちます。カフェインの化学構造は、ニコチンやモルヒネとよく似ていて、同じように神経を興奮させる作用があります。


2.カフェインの働き

(1)覚醒・興奮作用

 カフェインは、脳内にある、眠りを誘う受容体であるアデノシン受容体と結合し、アデノシンの働きを抑えることで、脳を覚醒・興奮させる作用があります。これにより、疲労感を感じにくくなり、集中力を高めてくれると言われています。なので、運動開始30〜60分前に、体重1kgあたり3〜6mgのカフェインを摂取すると、長時間の運動の疲労感を軽減し、パフォーマンス向上に効果があると知られています。

(2)血管収縮作用

 カフェインには、交感神経を刺激し、血管を収縮させる作用があります。この作用は、血管拡張による偏頭痛の緩和に効果があり、頭痛薬にもカフェインが入っています。

 また、血管を収縮させることで、一時的に血圧も上昇するので、低血圧の方に効果があります。

(3)利尿作用

 カフェインは、心臓の拍出量(1分間に心臓から全身に送り出される血液の量)を増やすとともに、腎臓の血流を増加させ、血液ろ過量を増加させます。これにより、尿の生成量が増えるので、排尿の量や回数が増加します。また、血液の中から余分な水分が減るため、血圧を下げる効果も期待できます。しかし、カフェインを定期的に摂取すると、耐性ができるので、利尿作用は低減されると言われています。

 

3.カフェインの吸収と代謝

 カフェインは吸収が速く、摂取後15分ほどで血中に現れ、諸説ありますが、30~120分で血中濃度がピークになります。半減期(体内で代謝されることにより、血中濃度が半分に低下するまでに要する時間)も約2〜8時間と個人差がありますが、長時間血中に残って効果を発揮し続けてくれます。(※3)

 また、カフェインの代謝は、女性ホルモンの影響を受けることも分かっており、黄体期(排卵から生理の始まるまでの約2週間)や、ピルを服用している期間は、カフェインの効果が長くなると言われています。


4.カフェインを含む食べ物

 カフェインを多く含む飲料には、コーヒー、お茶、ココア、 コーラ、 エナジードリンクなどがあります。食品では、チョコレート、眠気防止用のガムにも含まれます。更には、風邪薬、咳止め薬、鎮痛剤など、 薬にも幅広くカフェインが含まれています。

100mlあたりのカフェイン含有量

・レギュラーコーヒー 60mg

・インスタントコーヒー 57mg

・玉露 160mg

・紅茶 30mg

・煎茶 20mg

・ウーロン茶 20mg

・コーラ 10mg

・エナジードリンク 32~300mg

※参照:「食品中のカフェイン」(食品安全委員会)


5.カフェインの過剰摂取による弊害

(1)過剰摂取による諸症状

 カフェインを一時的に過剰に摂取すると、中枢神経系が過剰に刺激され、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠が起こります。また、消化器管も刺激され、下痢や吐き気、嘔吐等の症状が出ることもあります。更に、カフェインは、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌も刺激するため、乳腺症の症状を強くすることがあります。

 長期的な作用としては、高血圧のリスクが高くなることや、妊婦がカフェインを過剰摂取した場合に、胎児の発育を阻害し、低体重になる可能性があると報告されています。

(2)カフェイン摂取許容量

 カフェインを摂取し続けたとしても、健康に悪影響が生じないと推定される“一日当たりの摂取許容量”は、個人差が大きいことなどから、日本においても、国際的にも設定されていません。(※4)

 しかし、カフェインの摂取量に関して、国際機関でもそれぞれ注意喚起を行っています。各国で差はありますが、健康な成人では1日あたり400 mgまで、妊婦及び授乳婦については、1日あたり200〜300mgまでであれば、胎児や乳児の健康リスクは増加しないと言われています。(※4)

 カフェインに対する耐性は、人によって大きく異なります。寝る直前にカフェインをとっても何の問題もなく眠れる人もいれば、覚醒してしまい、眠れなくなってしまう方もいます。私の場合は、元からカフェイン耐性がない方でしたが、一時期、毎食後にコーヒーを飲んでいた時は耐性がついてしまいました。しかし、パワーリフティングという競技を始めて、高重量でのトレーニングの際や試合など、いざという時に効果を発揮できるように、今では普段は出来るだけカフェインを摂らないようにしています。カフェインの効果を十分に発揮させるためにも、適度な摂取を心がけることが一番だと思います!


 次回は、「ドーピング」についてです。オリンピックが迫る今日、スポーツと切っても切れない関係である「ドーピング」についてお話ししていきたいと思います。


<参考文献>

カフェインの安全性、代謝、健康に及ぼす影響(日本コカ・コーラ株式会社)※2

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