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  • 執筆者の写真田中亜弥

ドーピングとは1

 スポーツと切っても切れない関係にあるのが、ドーピング問題です。2019年5月に開催された世界リレーの会場で、2008年北京オリンピック4×100mRで優勝したジャマイカが、後にドーピング違反が判明し、失格が確定したことで、日本が3位から2位に繰り上がり、銀メダルセレモニーが行われました。

 また、2016年に、テニスの女王シャラポワ選手がドーピング違反となり、2年間出場停止になったのも比較的記憶に新しいかと思います。

 私自身、競技を始めてドーピング講習会に参加するまで、ドーピングに関してよく知りませんでした。なので、今回は、ドーピングについてお話ししていきたいと思います。


1.ドーピングとは

 日本アンチ・ドーピング機構(以下、JADAと呼びます。)によると、そもそもドーピングとは、「スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」を指します。(※1)

 禁止薬物を意図的に使用することだけではなく、ルールに反する様々な競技能力を高める「方法」や、それらの行為を「隠すこと」も含めて、ドーピングと呼びます。


2.ドーピング該当行為

 具体的には以下の行為が、ドーピング該当行為とされています。

【アンチドーピング規則違反】

(JADAのホームページより引用:https://www.playtruejapan.org/code/violation/)

(1)採取した尿や血液に禁止物質が存在すること

(2)禁止物質・禁止方法の使用または使用を企てること

(3)ドーピング検査を拒否または避けること

(4)ドーピング・コントロールを妨害または妨害しようとすること

(5)居場所情報関連の義務を果たさないこと

(6)正当な理由なく禁止物質・禁止方法を持っていること

(7)禁止物質・禁止方法を不正に取引し、入手しようとすること

(8)アスリートに対して禁止物質・禁止方法を使用または使用を企てること

(9)アンチ・ドーピング規則違反を手伝い、促し、共謀し、関与すること

(10)アンチ・ドーピング規則違反に関与していた人とスポーツの場で関係を持つこと

 10番目は意外と思うかもしれませんが、これも「ドーピング」になります。禁止物質や禁止方法については、世界アンチ・ドーピング規程の禁止表国際基準(Prohibited List) に定められ、少なくとも毎年1月1日に更新されます。そのため、去年まで使用可能だった薬が、急に禁止物質に認定されるケースもあるので、アスリートは常にチェックする必要があります。


3.アンチ・ドーピング規則違反例

 一般的には、ドーピング=アナボリックステロイド(筋肉増強剤)の使用というイメージがありますが、禁止物質はこれに限りません。街中で簡単に買える風邪薬、花粉症の薬、漢方薬(葛根湯など)やサプリメントにも、禁止物質が入っていることがあるため、注意が必要です💡

 例えば、2016年にプロサッカー選手、国体の自転車競技選手、インカレの水泳選手が、アメリカから並行輸入された有名なビタミン剤(ギャスパリ社のアナバイト)で「うっかりドーピング」の犠牲になりました。

 他にも、レスリングの男子選手が、禁止物質が含まれていないはずの胃薬を飲んだにもかかわらず、製造過程で禁止物質が混入していたために、ドーピング陽性反応が出たという問題も起こりました。


4.なぜ、ドーピングしてはいけないのか?

 徹底して気をつけていても、上記のようなことが起きてしまうドーピング問題です。

では、なぜ、そもそもアンチ・ドーピングが必要なのでしょうか?JADA(※1)によると、 


(1)ドーピングが蔓延すると、フェアなスポーツは成立しなくなる

(2)スポーツの土台を支える「フェア」が無くなってしまうと、その上に築かれている、スポーツが持つ多様な価値は壊れてしまう

(3)スポーツの社会的な信用を失墜させることに繋がる

(4)ドーピングは健康上の被害を引き起こす可能性がある

 これらのことを踏まえ、すべての人がフェアであることを支え、アスリートの健康を保護するために、ドーピングの撲滅を目指しているそうです。


 ドーピングの是非については様々な見解があり、どれが正解ということはないと思いますが、ドーピングとは何なのかということについて、今一度知る機会が設けられればと思い、

ブログにしてみました。

 次回は、アンチドーピングのスポーツである、パワーリフティングの競技者として、

私が普段から気をつけていることを載せたいと思います。


<参考文献>

アンチ・ドーピングとは(公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構)※1

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